保存標本の検鏡2

2007/01/23

K川でまた林道工事が始まったようで、どうも行く気を削がれる。K寺のほうもあまり変化がありそうもない。かといって遠出するほどの時間もない。そこで古い標本をひっぱり出して検鏡してみることにした。

まずはキアシオオゼミタケ Cordyceps cicadaeから。

乾燥標本を濡れティッシュで数時間くるんで"戻す"。この個体は1993年7月に採集したもの。この年は冷夏で梅雨明けがなかったといわれた年だ。7月から8月中旬にかけて、5、6箇所の社寺で発生していた。総数は黄色型も含めて50体以上。それからも何度か見ているが、ここ数年は発生していない。

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一応柔らかくはなったが形はなかなか元通りには戻らない。縦方向にはもともとあまり縮んでいなかったようだ。

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これが採集時の状態。

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カッターナイフで子嚢果をほじくり出してみる。

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つぶしてみると子嚢は見えたがどうやら未熟のようで胞子がほとんどできていない。

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かなり捜しまわってやっと胞子入りの子嚢を見つけることができた。二次胞子の大きさはだいたい図鑑のデータの範囲のようだ。

同時に黄色型も一体"戻し"ておいたのでこちらも検鏡した。同じく1993年の物だが虫食いがあってストローマの途中から半分に折れてしまっている。折れた先の方だけを"戻し"た。

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子嚢果はかなりばらつきがあるが、個体差の範囲だろう。

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こちらも子嚢はほとんど未熟だったが、胞子がはっきり見えるものがいくつかあった。

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二次胞子の大きさはややばらつきがあるが、これもだいたい図鑑のデータの範囲のようだ。
  1. 2007/01/24(水) 00:35:29|
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T. tenuis

2007/01/12

随分長いこと更新していなかったが、その間全く虫草探しに行かなかったわけではない。また、全く虫草が見つからないわけでもない。ただ、過去に何度もアップしたようなものばかりで、わざわざ発表する気にならないのだ。一応見つかった種類を挙げておくと、イトヒキミジンアリタケオイラセクチキムシタケハガクレシロツブタケ、冬越し中のヒメクチキタンポタケ、小型のGibellula leiopus、そしてカイガラムシ生の不明トルビエラだ。

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1月8日にK川に行った時、このカイガラムシ生の不明トルビエラをいくつか持ち帰った。この種は周年見られ、今までにも何度か持ち帰って検鏡しているが、ステリル(不稔株)が多くまだちゃんとしたデータが採れていない。いつもはアオキの葉裏で見つかるが、この日はヒサカキの葉裏にもたくさん付いていた。

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寄主のカイガラムシはアオキのものと同じ種のように見える。

年末に『台湾の昆虫病原菌図鑑』〈ATLAS OF ENTOMOPATHOGENIC FUNGI FROM TAIWAN〉(S.S.Tzean, L.S.Hsieh, W.J.Wu)を見せてもらう機会があり、その中に見覚えのある種がいくつか載っていた。このカイガラムシ生の不明トルビエラもその一つだ。葉裏のマルカイガラムシを周りに輪を描くように角状の子嚢果を出すTorrubiellaの仲間はT. luteorostrata Zimm. (1901.)とT. tenuis Petch (1922.)の二種が載っているが、写真を見ると色といい形といいT. tenuisのほうにそっくりだ。

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持ち帰ったカイガラムシ生の不明トルビエラを検鏡してみた。淡橙褐色の子嚢果をつぶして見ると子嚢を持っていた。

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子嚢の幅は4~5μmで頭部はやや細くなる。長さはかなりばらつきがあるようだ。

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子嚢胞子は子嚢の中に通常8本、幅1.5μm程で長さはかなりばらつきがある。二次胞子には分裂しない。

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胞子の中には細かい泡粒のようなものがたくさん入っていて隔壁は見分けにくい。

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メルツァー液を使ってみるとようやく隔壁らしいものが見えた。子嚢胞子は隔壁によって16に分けられるようだ。隔壁間の間隔は14~15μmでT. tenuisのデータとほぼ一致する。
  1. 2007/01/13(土) 21:33:15|
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