フタイロスカシツブタケ

2006/08/10

夏になったらあちこちに虫草探し旅行に行こうと思っていたのだが、この暑さではとてもそんな気になれない。で、結局いつものK川へ。ダム湖上流の流れ込みを遡る。この前のコメツキヤドリ?はややツブの数が増えていたが、もう少し置いておくことにした。
セミの声もよく聞こえるようになって、姿もよくみかけるようになった。カビにやられたヒグラシが2体みつかった。ひとつは白、もうひとつは緑の菌に覆われている。一応持ち帰ることにした。
いくつかの谷を調べたが収穫はなく、本流に戻った。キャンプ場に向かって川の中を進みながら探す。シンネマ不形成型のクモタケNomuraea atypicolaがいくつかみつかった。いずれも小型のアシダカグモ生だ。
かなり進んだところに枯れた桧の倒木があり、ふと見るとシャクトリムシハリセンボンが付いている。なんだシャクトリかと思ったがよく見ると少し変だ。黒っぽい子嚢果がストローマ上だけでなく虫の体表にも付いている。これも持ち帰って調べることにした。

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さて持ち帰ったヒグラシだが、セミに付く緑のカビといえば昨年も見つけたNomuraea cylindrosporaだが、昨年のはアブラゼミ、今度のはヒグラシなので念のために検鏡した。

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お馴染みの2種類の分生子がみつかった。やはりN. cylindrosporaだ。白いほうはBeauveria bassianaかと思ったがよく見ると少し緑がかっているように見える。未熟なN. cylindrosporaかもしれない。

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シャクトリムシハリセンボンのほうも詳しく調べてみた。

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虫体に直接付いているほうの子嚢果は普通のものより赤味が少なく、形も少し違う。どうやらトルビエラ型の重複寄生菌のようだ。枯木に付いていたにもかかわらず古くはなっていないようだが、やはり胞子の自然放出はしていないようなので子嚢果をつぶして検鏡してみた。

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子嚢果はアリノミジンツブタケに似ている。

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はじめ子嚢胞子は見えなかったが、時間がたつと子嚢が溶けてきたのかばらけた子嚢胞子が見えるようになった。隔壁も最初ははっきりしなかったが、これもだんだん見えるようになってきて、二次胞子に分裂するのが確認できた。分裂した二次胞子は丸くなるようだった。

黒っぽい重複寄生菌以外にオレンジ色のツブがいくつか付いていたので、これも検鏡した。

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こちらはトルビエラではなくニクザ菌の仲間(おそらくネクトリア)のようで、子嚢の中にばらばらに8つの子嚢胞子が入っていた。

もうひとつ薄いピンク色の菌が付いていたが、これは不完全菌でおそらくPaecilomyces属。

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フィアライド。

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分生子。

冬虫夏草の会の会報でこのトルビエラ型の重複寄生菌に似た写真を見たような気がしたので、山鳥さんの掲示板で訊ねてみるとN内さんから回答があった。やはり香川で出ているものと同じでフタイロスカシツブタケのようだ。








  1. 2006/08/12(土) 11:31:08|
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クモが少ない2

2006/08/03・07

7月27日に調べ残したハガクレ谷を調べてみた。8月3日に下流を、7日にその上流を調べた。暑いので一度に長時間は体力が持たない。この谷は昨年トルビエラクモタケクモノエツキツブタケが大発生していたところだが、今年は全く出ていない。少ないというようなレベルではなく全く無いのだ。たまに見つかっても昨年のものがカビて残っているだけというひどさ。みつかったのは黄色の不明クモ虫草2体(未熟)とコエダクモタケが3、4体(過熟でカビが生えかけ)にコゴメクモタケ3体ぐらい。これらの種はもともとそんなに多いほうではないので、トルビエラクモタケとクモノエツキツブタケが目立って減ったということになる。大発生の反動だろうか?結局トルビエラは3日に見つけた1体のみ、クモノエツキのほうはカビていない未熟なものがいくらか見られただけだった。不完全型ではギベルラやAkanthomyces novoguineensisのほか、シンネマ不形成型のクモタケNomuraea atypicolaも見つかったが、全体的に数は少なかった。
クモ以外ではハガクレシロツブタケがここでも多い。他には昨年9月12日にみつけた赤ツブのトルビエラと同じものが見つかった。昨年より一ヶ月以上早いしこの谷では初めてだ。持ち帰って検鏡することにした。昨年も出ていたケカビの仲間Sporodiniella umbellataも2体みつかった。
未熟なものやカビたものが多かったので現場でもほとんど写真は採らなかったし持ち帰ったものも少ない。

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3日に持ち帰った赤ツブのトルビエラ。

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検鏡してみたが子嚢は充分成熟しているようだ。二次胞子も見える。

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一つ一つの子嚢でかなり変化がある。二次胞子は始め短冊状だが、やがて角が取れて膨らむようだ。

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メルツァー液を使ってみると子嚢内の胞子がややはっきり見える。ピントをずらせながら観察するとどうやら子嚢胞子は8個に分裂するようだ。この点ではハガクレシロツブタケに似ている。

7日に持ち帰ったGibellula

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G. pulchraのようだがクモノエツキツブタケの子嚢果の上から出ているように見える。

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こちらは長いストローマかシンネマの途中からギベルラが出ている。

kekabi60807a.jpg
これも7日に持ち帰ったSporodiniella umbellata 寄種はハエ?

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7月4日に見つけたコメツキムシタケ? 別の菌の重複寄生をうけているようだが、白いツブのようなものが見える。もしかしてコメツキヤドリシロツブタケ?(3日撮影)







  1. 2006/08/08(火) 11:31:45|
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クモタケ3

2006/08/01

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7月27日に持ち帰ったクモタケ?はやや未熟だったので追培しておいた。それがどうやら完熟して薄紫色の分生子を充分に付けているようなので、検鏡してみた。
クモタケ?と書いたのは実はまだクモタケNomuraea atypicolaと確定したわけではないからだ。

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普通のクモタケはキシノウエトタテグモに付き巣穴の中から長いシンネマ(分生子柄束、いわゆるキノコの部分)を伸ばすのだが、この個体はアシダカグモの仲間に付きシンネマを作らずに直接体表に分生子を形成している。
色や質感からみてクモタケに間違いないと思うが、やはり検鏡してみなければ結論は出せない。
クモタケは何度か検鏡してこのブログにも載せている。(2005年6月21日2006年7月2日)
このシンネマを作らないタイプも2005年8月8日2005年9月19日に検鏡してはいるのだが、分生子のみでフィアライド(分生子形成細胞の一種。)を確認しなかった。分生子の形はたいてい楕円形だから、これだけでは同定の決め手にならないのだ。

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カッターナイフで腹部から少し大きめに切片を切り出し、アルコールで湿潤させてから軽く水洗いして検鏡した。前回はやや未熟だったため分生子柄が充分に発達していなかったが、今回ははっきり確認できた。

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柄を中心にメトレで支えられたフィアライドが輪生する。その先端に分生子(矢印)が形成される。
Paecilomyces属ではフィアライドは先の窄まったとっくり型になるが、Nomuraea 属では鈍頭になる。

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分生子

分生子もフィアライドもクモタケのものと一致する。
シンネマを作らないタイプは単なるカビと見なされて今迄無視されてきたが、クモタケNomuraea atypicolaはキシノウエトタテグモ以外にも寄生しその場合はシンネマを作らず直接体表に分生子を形成すると結論づけてよさそうだ。
  1. 2006/08/03(木) 10:41:20|
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